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恋、つまり、まばたき(R18)【カラオケ行こ!】

第6章 恋はつまり、まばたきの間に(終)






「楓ちゃん」
「……狂児さん!!」

関西国際空港第1ターミナルの4階。国際線の出発フロアの端でベンチに座ってぼんやりとしていたが、数ヶ月ぶりに愛しい人の顔を見て慌てて立ち上がった。やっぱり彼はいつも、楓の前にいきなり現れる。
相変わらず洒落て鷹揚とした佇まいと、近づきがたい威圧感を同時に放っている。何も知らない者が見れば世界中を飛び回るやり手のビジネスマンのようだ。

「出発の時間教えてくれてたやろ、見送りに来たで」

狂児は辺りを見回し、怪訝な表情を浮かべた。

「……俺しかおらんの?」
「友達にも教えてませんし……母には反対されましたから……多分来ません」

母とは、狂児が服役するという連絡を楓にしていなかったという推測がそのまま当たっていたこと、そして服役中の狂児に、楓に黙って面会に行っていた事を知ってから話をしていない。
狂児が楓にその事を言わないでくれたのは気遣いでしかなく、ひたすらに申し訳なかった。
母は楓と狂児の関係を好くは思っていなかったようだが、本当は母が狂児を気に入って、楓を出し抜こうとしていたようだ。我が母ながら呆れてしまう。留学を反対されたのは仕送りが滞ることと寂しさからだとは思うが、母にとっては自立するいい機会、と思うことにした。

「あらぁ、そうかあ……まあ、まだ時間あるんやろ、荷物もう預けて、どっか店でも入ろうや。そうや、預ける前にこれ」

狂児は小さなピンク色の箱を、スーツのポケットから取り出した。

「包装したら嵩張ってめんどいと思ったから、裸ですまんな」
「これ……」

楓はこのシリーズの香水を、美容部員として働くようになってから時々使っている。

「楓ちゃん、多分今これ使ってるんやろなと思てん。……俺の匂いとよく馴染んでたな」
「そう……そうなんです。……ええ名前やから……気に入ってて……」
「確かにええ名前やな」

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