• テキストサイズ

恋、つまり、まばたき(R18)【カラオケ行こ!】

第1章 いつも、いきなり


「飯用意しといてな。楽しみにしとくわ」
「わかりました……!!」

そこまで言うと狂児は楓を立ち上がらせ、頭を撫で、唇を親指でそっと撫でると体を屈めて軽くキスをしてくれた。
スーツをきっちりと着て少し乱れた髪も撫で付け、佇まいを直す。

「じゃあこのまま出るわ。また後でな」
「はい!」

階段を上がる狂児の背を見送る。階上でドアの開く音がした。
楓は急いで後始末をして、服を着た。
非常階段を化粧品売り場の階まで上がり、メイクと髪を整えて売り場へ戻る。
少し顔色が悪く見えるように、わざと自分に合わないカラーのリップとアイシャドウをつけた。我ながら姑息だと思った。
案の定、怪訝そうな顔で他のスタッフに迎えられた。

「どうしたの、遅かったね……」
「すいません……ちょっと具合悪くて。トイレで休んでまして……もう大丈夫です」


あとは彼の移り香が、強い香水の香りが、気づかれないことを祈った。
夜への期待感が、胸を躍らせた。





/ 53ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp