第6章 血濡れた面
美雲が手に取る前に、その面を取る。間違いなく厄除の面だ。
面には真っ直ぐ傷が入っている。問題はその傷を繋げているものだ。赤黒く傷のつなぎ目が光る。ギラギラとしているその少しつなぎ目に恐怖すら感じた。
美雲が持ち帰った日輪刀を鱗滝が抜く。
躊躇うことなく面を斬る。その瞬間あの禍々しさを放っていたつなぎ目が赤黒い炎を燃やし消えていった。割れた面が落ちる。
"鬼の匂い"が消える。
美雲はその光景を驚いていたような目で見ていたが、何かを察したのか静かに視線を外す。
「わしに話していないことがあるな。」
そう美雲を諭す。美雲はぽつりぽつりと話しだした。
母が鬼になった時"童磨"に出会ったこと、そして救いの手を求めてしまったこと、そして選別前に再び出会ったこと。
美雲は初め、鬼の存在を知らなかった。故に、出会ってしまったことも救いを求めてしまったことも仕方がない。しかし、今の美雲は鬼の存在も知り、倒し方も心得ている。
並みの鬼なら倒せるだろう実力もある。その美雲が再会しても倒せなかった鬼。
面から発せられていた匂いからも、十二鬼月という文字が頭に浮かぶ。
だがしかし、疑問が残る。
なぜ、美雲を殺さなかったのか。