第1章 はじまり
真夜中の父との会話はあっという間に時間が過ぎた。
長く話して父は辛そうだったが、わたしが話を止めようとすると父はそれを拒否して話し続けるのだった。
「美雲、仕事で疲れているだろうに話を聞いてくれてありがとう。最後に1つお願いだ。今日は家族3人、手をつないで寝よう。父さんの手を母さんに届くようにしてくれないか」
「うん、分かった」
父の腕を両手で支えながらそっと動かす。そして傍らで眠る母の手と重なるようにした。
そして私も母と父を挟むようにして布団に入る。そして父の空いているほうの手を握った。骨ばった手は栄養も足りずカサカサとしていた。しかしそこには確かな温かさがあった。
「美雲、ありがとう」
「ううん、おやすみ。お父さん。」
「おやすみ。」
私は父の手をギュッと握り、眠りについた。手から感じる温かさに安心感を感じながら。
「かあさん、美雲、、、私はしあわせだった」
翌朝、父は帰らぬ人となった_________