第6章 血濡れた面
歩を進める。藤襲山には夕暮れ前に着く予定だ。
竹林に差し掛かる。高くまで伸びた竹が風で揺れ、道に木漏れ日が差す。
明るい道を進んでいくと、だんだん竹の間隔は狭くなり、葉の茂りで少し辺りが暗くなっていく。日が当たらない一帯は、急に気温が下がったような感覚を受ける。
ザッ、ザッ。
美雲に近く足音。刀に手を添えて、音の方向を見やる。
向いた先はより一層竹が生い茂り、不気味に薄暗くなっている。
そこから浮かび上がるように姿を現わす男。口元には張り付いたような笑みを浮かべている。
「…童磨」
「久しぶりだね、美雲。」
母を失ったあの日。助けを求めて手を握りかけた相手だ。
あの時は何も感じなかったが、今はひしひしと感じる_____
「…やっぱり鬼だったんだ」
美雲は刀を抜き、童磨に向け構える。
「まぁね、でも俺は優しい鬼だから、あの時美雲を助けてあげようとしたんだよ。迎えにきてあげたのに、そんな物騒なもの向けないでよ。あの頃の無垢な美雲のほうが可愛いかったよ。」
へらへらと話す童磨をの言葉を遮る。
「あなたがお母さんを鬼にしたの?」