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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第5章 呼吸




翌日からも変わらず1人で鍛錬を続けたが、相変わらず"自分の刃"は見つからないままだった。



錆兎と刀をぶつけては「違う!」と否定された。



早く岩を切りたい、最終選別を受けたい、人々を救いたい_____
焦りだけが募る。
鱗滝さんからの課題も、錆兎からの課題も、どちらも達成出来ていない。何も成長していないのではとさえ思った。



朝起きる。鱗滝さんの分の朝食だけ作り、家を出た。
いつもなら鍛錬を始める。しかし、美雲の足はトボトボとあの岩の元へ向かう。



刀傷だけついた岩肌に触れる。
この岩に初めて対面した時。切れないものなどないと刃を振るった時のような自信は今はもうなかった。
あの時より弱くなってる。そう思うと涙が出そうになる。必死にこらえようと俯く。額と岩肌が触れそうな距離だった。



ポツ、ポツ。



美雲の手に雨粒が落ちる。岩にも雨があたり、だんだんと色が変わっていく。濡れた岩肌をそっと撫でる。そこにはやはり刀傷があった。今では傷をつけることさえ出来ない気がする。
岩を前にしゃがみ込む。強くなった雨足が美雲を濡らす。
雨音にかき消されるほどの小さな声で美雲は泣いた。



降り続く雨の音が少し小さくなる。
美雲が顔を上げると錆兎が立っていた。いつもと装いが違うと感じたのは、羽織りを美雲にかけているからだった。


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