第5章 呼吸
自身の刀を弾き返される。
岩の前に、狐の面をつけた宍色の髪をした少年が立っていた。彼も刀を構えている。
「…誰っ!」
突然現れた刀を持つ少年に警戒する。刀を構える。
刀を対人で構えるのは鱗滝さんとしかした事がない。相手の強さが分からない。初見の相手を前にする緊張と少年から醸し出る闘気が美雲の手を震わした。
「そんな太刀筋では岩は切れない。」
少年がすごいスピードで斬りかかってくる。目で追うのがやっとだ。
迫ってくる刀をギリギリではじき返す。
キンッ、キンッ
静かな山の中、刀がぶつかり合う音だけが響く。
少年の刀さばきに押される。なんとか踏みとどまるも、一方的な攻撃が続く。
(…くっ、このままじゃ駄目だ。私も斬っていかないと…っ)
少年の振った刀を力を込めて弾き返す。彼が次の振りにはいる一瞬の隙に自身の刀を滑り込ませる。
彼が体勢を崩したところを一気に攻め込む。刀がぶつかり合う。私の刀と彼の刀がギリギリと競り合う。
「いい動きだ。…昔の稽古を思い出すようだッ!!」
グッと力を込めた少年の突きに押し返されふらつく。尻もちを付きそうになるも何とか堪える。