第5章 呼吸
「そうなんですね。その人の技が凄かったんです…本当に。静かな海が広がって…なんか何も考えられなくなったんです。うまく言えないんですけど…。」
美雲はぼそぼそと話す。
「…凪か。
それは私の教え子が考えた型だ。」
美雲の目が見開かれる。
「と、冨岡さんをご存知なんですね!」
「ああ。私の教え子だ。今は鬼殺隊の水柱を担っている。」
水柱…。どんな役職なのかはすぐに鱗滝さんが補足してくれた。
鬼殺隊の中でも位の高い剣士。実力も秀でている。それを知り、自分が見た剣術がいかに至高のものだったかを理解した。
私も強い剣士になりたい。冨岡さんのように人を救える刃を振るいたい。
目指すべきには高すぎる目標。だけど、届かない目標の方が常に上を向いていられる。
冨岡さんをも指導した師に鍛錬をしてもらっていることが、いかに有り難いことか身にしみる。
その日から美雲の鍛錬はさらに密度の高いものになった。