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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第5章 呼吸




ブンッ、ブンッ。



美雲は刀を振り続ける。もっと早く。もっと鋭く…。
その耳で覚えているのは冨岡さんの刀さばきだ。刀を振っているのが分からないくらい無音だった。流れるような動き。
私の動きはまだまだだ…。もっと鍛錬しなければ…。



一心不乱に刀を振り続け、手の皮がむける。その痛みで我に返る。
すでに日も落ちている。ご飯の時間に戻らないと怒られる、美雲は慌てて小屋に戻るのであった。



鱗滝さんといろりを囲む。食事をとりながら会話をする。
それは鬼殺隊の事だったり、鬼の事、刀の事など様々だった。



そんな他愛のない食事のひと時だったが、町にいたときとは違う。誰かに気を遣うことなく、鱗滝さんには自分が思ったままの言葉を伝えることが出来た。ありのままの自分で過ごせることがとても心地が良かった。
そして今は明確な目標もできた。毎日が充実している。





嬉しそうに話をしながら食事をする美雲の様子を鱗滝は眺めていた。鍛錬の時とはまるで違う。会話をするのが楽しいのか、いつ見てもにこにことしている。
その様子は剣士というにはあまりに幼かった。この子は町で適当な相手と家庭を築き、暮らしていくほうが幸せになるのではないかとさえ思う。
鬼殺隊に入れば常に死はつき纏う。わが子のような教え子をできれば失いたくない。



食後、また刀の素振りに行くという美雲を見送る。



あの子が鬼殺隊になることを目指しているというのなら、死の覚悟をしなければならないのは育手の自分もだ。
美雲がでていったしばらく闇を見つめていた。


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