第1章 はじまり
必死に父にかける言葉を探すが見つからない。
私はただただ俯くばかりだった。
「、、、美雲はやさしい子だ」
父が微笑んだように見えた。きっと元気だった頃の父だったら大きな手で頭をポンポンと添えてくれていただろう。
「美雲。よくきくんだ。父さんがいなくなっても母さんと2人で支え合って生きていきなさい。私が居なくなったら母さんは落ち込むだろう。弱いところのある人だから。どんなに美雲にきつく当たってしまっても見捨てずに支えてやってほしい、、、」
話しながら顔色を悪くする父。長く喋って息も苦しくなっている。
「母さんは父さんの、"大切なひと"だから」
父はそこまで話すとゆっくりと息を吐いた。
「うん、分かったよ。母さんを見捨てたりしない。
ほら、お父さん、ゆっくり深呼吸して」
「、、、だいじょうぶ、そして美雲。美雲は父さんのたからものだ。家族を大切にして、他人を思いやれる。こんなやさしい子にそだって父さんはうれしい。できることなら美雲をずっと見守っていたい、、、離れたくない、、、ッ」
涙で滲む視界で父の姿も滲んでしまう。
(父さんに似たんだよ)
そう言いたくても言葉がうまく出なかった。