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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第1章 はじまり



「そんなこと言わないで」
私は父の手を握った。握り返してくることはないその手。


「美雲。仕事たいへんだったろう…くろうばかりさせてすまない」
父が申し訳なさそうにつぶやく。


「そんなことないよ。お父さんこそやりたい事とかない?私が力になれる事だったらなんでも言ってみて」


「やりたいこと、、、とくにない。お母さんや美雲にかこまれて最期まで大切に思ってもらえて父さんはしあわせだ。後悔なんてなにもない」
私の目をじっと見て伝えてくる。病気で弱々しい声だがそこには強い思いが確かにあった。


「よかった。1日でも長く、私たちのそばに居てね」
父の手をギュッと握った。



「、、、それはできない」



「さいきんは息苦しくなってても自覚できないことが多い、、、呼吸の筋肉もそれに関わる神経ももうだめなんだろう、、、」



父から出た弱気な言葉。いつもは口に出さない言葉だ。
それだけ今日は"最期"を感じているのかもしれない。



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