第3章 旅立ち
布団から体を起こすように座っている彼の近くに腰を下ろした。
「さっきはありがとうございました。…本当に助かりました。」
「ははは、来てくれてよかった。話したいなと思ってずっと視線送ってたんだよ。」
そう言って彼は笑う。布団の中の足をさするように触る。思うように動かせないんだろう。
「呼んでくれればよかったのに」
美雲も笑いかえす。
「…呼んでも気づかなさそうなくらい難しい顔してたよ?」
ぎくりとする。さっきもやもやと悩んでいた時のことだろう。
「…ははは、お祝いの席でそんな顔してちゃいけませんね」
笑ってみせる。
「僕のせいで余計悩ませちゃったかな。でも、あの言葉に嘘はない。誰が悪いとかない。だれも責めちゃいけない。美雲は悪くない。」
彼はまっすぐ美雲を見つめて伝えてくる。
「…嘘だなんて思ってないですよ。」
「美雲にはみんな感謝してるから。」
返す言葉がわからなくて、曖昧にごまかした。
すると彼と布団を並べて伏していた老人が話し始める。
「居場所が欲しいと思うなら町をでろ。町の者はお前を嫌ってはおらん。お前が辛いと感じているのはなんだ?自分の顔を見るとみんなが鬼を思い出すから辛いと考えてるんじゃないか?それは違う。お前自身が町民を見ると罪の意識にさいなまれるから辛いんだ。だれも責めてないのに、お前は自分で自分を責めてる。自分で首を絞めてる。
町をでろ、美雲。もう自由になれ。お前は悪いことなんてしていない。お前が自由になることを誰も反対しない。」