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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第2章 消えた雨粒




なんとか鬼に襲われる寸前で少女のところまできた。近づくと少女というよりは娘というくらいの年齢だと分かった。遠目で見間違えるくらい華奢な体つきだ。



鬼との距離に刀を抜く隙がないと判断し、娘を抱えて飛び上がる。娘は固く目をつぶったままだった。鬼を目の前に死を実感したのか。娘は何か呟いている。聞き取れるかどうかというほどの小さい声。



「…お母さん……ごめんなさい…」



(…もしかすると)



少しの可能性を考える。



(…母が鬼になったのかもしれない)



ただの勘だった。しかし、いまは鬼となった経緯まで考える時間も必要性もない。己の成すべきことはただ一つ。鬼を斬ることだ。
身内が鬼にされて自棄を起こすことは容易だ。しかし本当に必要なのは、そこからどう自分を奮い立たせるのかだ。それは至極難しいことだ。



「…しっかりしろ」



娘に声をかける。その目がゆっくりと開かれた。
娘は何も喋らない。息を飲むように黙っている様だった。



なるべく高さのある建物の屋根に着地する。



「鬼を前に無防備になるな。死にたいのか。」



鬼が襲ってきたのに逃げなかったのは何故かを聞いたつもりだったが、娘からは何故か謝られた。答えたくないのかもしれないと娘から視線を逸らす。


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