第2章 消えた雨粒
〜〜〜【義勇side】
北の山村で鬼が人を食い荒らしているとの情報があり、任務に出た。山村までは距離がある。急いで行かなければ犠牲者が増える。一刻も早く目的地に着き、鬼を斬ることが自分の使命。
道中雨が降っていたがその足を止めることはない。冬の夜、降り続く雨、走りながら出る吐息は白い。
目的地より1つ手前の山のふもとに町があった。なんてことはない町並みだったが義勇は足を止めた。
情報は来ていないが、そこには確かに鬼の気配がする。自分が目指していた山の方角を見る。急がねばならない。しかし、ここにもいるかもしれない鬼を見なかったことには出来ない。
義勇は町に向かって走り出した。
町に近づく途中で大きな通りが見えてきた。
通りの真ん中に間違いなく鬼がいる。鬼の周囲には既に動かなくなった犠牲者の人影も多く見える。
(…やはり鬼がいたか)
表情は変わらなかったが、犠牲者が多く出ているのを目の当たりにして、義勇の足はさらに加速する。
鬼を注意して観察しながら進む。
見ていると鬼の前に少女が立った。少女は身体を震わせながら鬼に向かって何か訴えているようだった。それが罵りなのか助けを請う言葉なのかは聞こえなかった。
少女の訴えも虚しく、鬼は牙をむき、襲いかかろうとした。
(俺が着くまでなんとか…)
義勇の思いに反して、少女は鬼から逃げようとしない。
(…くそっ)
さらに足を速める。間に合え、とさらに力を込める。