第2章 消えた雨粒
恐る恐る顔を起こす。
美雲の周りには氷でできた蓮華の花々が咲いていた。キンと冷える空気。現実感のない氷の花がそこに輝いている。
花から延びる蔦が鬼を縛りあげ、そして美雲を包むように守っている。
スルスルと蔦が動き出す、そして刀を構えていた彼のほうに向かい一気に伸びていく。しなる鞭のように。突き刺す槍のように。
それは美雲を守るように伸びていた蔦とは違い、明らかに人を傷つけようとする敵意を帯びている。
蔦は伸び、刀を持つ彼を取り囲む。突き刺すように一気に一点へ攻撃を開始する。
逃げ場のない全方位から攻撃に美雲は思わず目をつぶる。
「全集中・水の呼吸 拾壱ノ型 凪」
彼の声がして、美雲は目を開ける。
息をのむ。
そこにはピンと張った布の様に、波のない、鏡のような海が広がっているように見えた。