第2章 消えた雨粒
「鬼が人に戻る方法はない。人間の時の記憶はない。同情はするだけ無駄だ。」
バッサリと切り捨てられる。
「、、、ッ、私には母の死を決められません、、、」
こちらに向けられていた視線はすっと外された。
「…恨むなら母を鬼にされたことを恨め」
そう言い残すと彼は”鬼”の前に舞い降りた。
刀を持ち、構える。
その静かな迫力は今から”鬼”を斬ろうとしているのだとすぐわかる。
(、、、母が殺されてしまう、、、ッ)
母が人間に戻ることは不可能だといわれた今、
…それでも母のことを諦めきれなかった。唯一残っている私の家族だ。
あとになってから後悔を取り戻そうとする___
私ってつくづくダメダメだと自嘲する。
これからは後悔しないようにちゃんと自分で道を決めていかなきゃ____
私は屋根を滑り下りる。雨で濡れた瓦で足を取られる。結構な高さがあってうまく着地できず足を捻った。痛みも無視して、彼と”母”の間に立つ。
両手を広げ、彼に頼み込む。
「…母を殺さないで」
彼が何かを口を開いた。しかしその声が届く前に、けたたましい唸りを上げた”鬼”が背後から襲い掛かる。
とっさに身を屈める。そんなことをしても身を守れるはずがないと、この町の惨状を見ていればわかった。でも今の美雲にできることはそれしかなかった。
鬼が来る衝撃は____来なかった。