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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第2章 消えた雨粒




その冷ややかな視線に反射的に謝ってしまう。



「…ごめんなさい」



「鬼の前で油断すれば待つのは死だけだ」



謝罪の言葉を求めていたわけではないとフイと視線を外された。そして、”鬼”に向き直る。
視線や体の動き、すべてが流れるように綺麗で、それはまるで水のようだった。彼は、スッと刀を抜く。月明りを受け、刃が光る。その光から刀身が青いことがわかる。刃面から反射する光で、降り続く雨粒もきらきらと輝く。



「…この鬼はお前の家族か」



視線が私の方にちらりと向く。目が合う前に、視線はすぐに”鬼”に戻された。



「…私の母です」



その言葉に再度目線だけを向けられる。先ほどとは違い、すぐにそらされることはなかった。見つめあう。
ずっと変わらない涼しい瞳の色が少し変わったように感じた。同情でも慰めでもない何か違う___



「お前の母は鬼となり、町の者たちを殺した。鬼は滅さなければならない。…その方法は首を落とすだけだ。」



視線は向けられたまま。その表情は”母を斬ることを許せ”と言っている。



(首を落とす、、、母の首を、、、。)



彼のいう鬼を滅する方法というのは、同時に母の死を意味すると察しがつく。
母の変わり果てた姿を再度確認する。ガァァとこちらを威嚇している。屋根に上がってくるのも時間の問題だ。
母をもとの人間に戻す方法はないのか。なんとか母を生かす方法は。私に母の死は決められない___



「、、、なんとか母が生きら「 ない 」」



私の質問を遮るかのように彼が答える。


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