第18章 築く -音-
宇髄は美雲を見つめ、温かな雰囲気を味わおうとした。しかし、その雰囲気を壊すかのように、冨岡が口を開いた。
「…宇髄。食事が済んだなら帰ったらどうだ。…屋敷で待ってるひとがいるんじゃないか。」
冨岡は急に口を挟んだかと思えば、早く帰れと言わんばかりに席を立つ。
その冨岡の顔を見た宇髄は少し笑い、美雲に触れていた手を離した。
「はいはい、分かったよ。そんな睨むなよ。…おー怖い怖い!冨岡が妬いてやがる。」
「…なんの話だ。」
「怒んなって(笑)…お前も取られたくないならしっかり守っとけよ。
じゃあ、今日はこれで失礼するわ。美雲、飯美味かった!また、俺の嫁たちも紹介するから、ご飯でもご馳走するよ。」
宇髄はよいしょと腰をあげた。
「帰られますか?食後のお茶淹れますよ?」
美雲の声掛けに答えたのは、冨岡だった。
「…必要ない。」
「え?」
宇髄に聞いたつもりの美雲は困惑した。そんな冨岡の様子をみて宇髄は思わず少し笑う。
「美雲、ありがとな。でも大丈夫だ。これ以上ここにいたら、冨岡がヤキモチで拗ねちまうから、退散するわ(笑)」
「…。」
冨岡は何も反論しない。美雲は何のことだか理解出来ずにキョトンとした。
宇髄はひらりと片手を振ると、玄関に向かい歩き出す。見送るために美雲はその後を追った。冨岡は部屋から出ようともしなかった。
「お前らって…いつもこうなの?」
2人きりの廊下で宇髄に訊ねられた。
「こう、とは?」
「飯の時もだんまりしちゃってさー、しんどくねぇの?」
美雲は、あぁ と少し笑う。
「しんどくないですよ。冨岡さん、口数は少ないですけど、とっても優しいんです。食事の時も残さず食べてくれるだけで十分です。」
にこにことそう話す美雲はいまの生活に満足していることが容易に分かる。
その表情を見ていれば分かる事をあえて聞いてしまう。
「…いま幸せか?」
唐突な質問に美雲は少し驚いた顔をしたが、すぐに目を細めた。
「はい。とっても。」