• テキストサイズ

【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第18章 築く -音-



(お嫁さん、要らないんだ…。)


冨岡の「必要ない。」と言い放った声が美雲の頭に木霊する。


(…別に、お嫁さんになれるなんて思ってなかったし…。)


そんな言い訳をするが、明らかに気分が沈んだ。冨岡に寄せている想いは自分に留めておかなければいけない。打ち明けた所で玉砕する。むしろ、そのような浮ついた気持ちは軽蔑されるかもしれない。
叶うことのない片想い。いまの関係を守れるのであればそれでもいいと言い聞かせる。それでも一度沸いてしまった悲しみを無いものには出来ない。


俯きかけていた美雲の背中がポンポンと優しく叩かれた。


「わりぃ、わりぃ。お前の気持ちを知らず可哀想なことしたな。謝る。だから…、そんな悲しそうな顔すんな。」


少し困ったように眉を下げた宇髄が、子どもをなだめるような声を美雲にかける。背中を叩いた手は、そのまま美雲の頭をポンポンと撫でる。
宇髄の逞しい腕からは想像できないくらいに優しく、温かだった。大人の包容力なのか、妻帯者の貫禄なのか、その手は美雲を包むように落ち着かせる。


「…そんな。謝られることなんて何もないですよ。」


宇髄に笑って見せる。その顔を見て、宇髄は苦しそうに笑った。


「…だからそんな顔すんなって。」


美雲の頭を何度も何度も撫でた。
寂しくなった心を埋めてくれるその手に留まっていたくなるような、なんとも言えない気持ちになった。


宇髄は先日の柱合会議での不死川の苦しそうな顔を思い出す。


(不死川、お前の気持ちが分かるわ。…放っておけねぇよな。)


美雲を撫でていた手をそのまま頬に移し、小さな顔の輪郭に添えるように手を当て、親指でふにっと頬を撫でた。
美雲は突然のことに目を丸くしていた。そして段々と顔を赤くする。そんなウブな反応に笑いそうになる。美雲には人を惹きつける何かがあるなと、少しからかうように何度か撫でた。
/ 230ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp