第18章 築く -音-
町は賑わっていた。がやがやと人々の声が飛び交う。
露店に並ぶ商品を見ながら町を歩いた。買うものは決まっていたので、ただ見るだけ。
きらきらと光る髪飾りや帯留めが並ぶ店に目が止まる。店主に声を掛けられるが、笑ってその場を流す。
目当ての場所についた。年頃の娘が目当てにする店としては随分と所帯じみている。そこは八百屋だった。
新鮮なお野菜を何種類か選んでいく。
「お若い娘さんね。どこかの女中さんかい?それとも新妻かな?」
八百屋のおばさんが元気な声を飛ばす。
「んー、どっちでもないですけど。食事当番みたいな感じです。」
曖昧に笑って、会計を済ます。
「いや〜!見れば見るほどべっぴんさんね!結婚してないなら早く結婚しちゃった方が良いわよ〜!!」
いつまでも声を掛けてくれるおばさんに軽くお辞儀をして店を出た。
(ちょっと買いすぎちゃったかな。重た…。)
お野菜でいっぱいになった袋を両手に持ち、来た道を帰る。
彼のご飯を食べる姿を想像したら野菜を選ぶ時も楽しくなった。しかしついつい買いすぎた野菜たちは思っていた以上に重たくて、途中休み休み道を進む。
来た時よりも時間が掛かっているのは明らかだった。
(どうしよ、お夕飯までに帰れるかな。)
少しの休憩を挟み、また立ち上がる。ふん!と野菜を持ち上げる。歩きだすと、両手に持っていた重さが急になくなった。
振り向くと、重たかった野菜を軽々と持ち上げた姿が居た。