第16章 読めない心
自身との思いに反して、白石は明らかに表情を曇らせる。
さっきまでニコニコしていた表情から打って変わって、眉を下げて落ち込んだ顔をする。
「す、すみません…。冨岡さんは私の恩人ですし、何かお役に立ちたいと思って…。でも、ご迷惑をかけてしまいましたね。出過ぎたことをしました。申し訳ありません…。」
白石の落ち込みように自身の言葉が足りていないと察する。他の柱にも散々注意されてきたことだ。自分の思いが伝わる言葉を探す。
「…迷惑ではない。俺と白石は対等だ。だから必要以上に気を使うなということだ。」
白石が掃除をしてくれたことも、食事を用意してくれたことも迷惑ではない。
「…食事、頂く。」
そう言葉を続ければ、白石はまた表情をころりと変える。嬉しそうな笑顔を弾けさせ、炊事場へ向かっていった。
彼女の笑顔に思わずつられそうになる。誰かから真っ直ぐな善意を向けられるのは久しぶりの感覚だった。