第16章 読めない心
【義勇side】
任務を終え屋敷へ向かう。昨夜の鬼は、さほど強い鬼では無かった。任務は無事に完了し、本部への報告もすぐに終わる。
屋敷へ戻り廊下を進む。東側の部屋を覗いたがNAME2#の姿は無かった。
稽古場を覗いてみたが、やはりその姿はない。そのまま稽古場に一歩踏み入れると、いつもより空気を澄んで感じた。床や柱が艶やかに輝き、塵ひとつない部屋は清々しかった。外からパンパンと布をはたく音がする。
稽古場を後にし、廊下を進む。縁側に出ると探していた姿を見つけた。
白石は庭でシーツを干していた。陽の光を浴びた白いシーツが眩しい。シーツをのばす彼女の額はうっすら汗をかいており、日差しを浴びて綺麗な肌が光って見えた。
声をかければ、白石は振り返り嬉しそうな顔を向ける。飼い主を待っていた犬のようだった。瑠璃色の瞳を細めて話す彼女から目が離せない。
すっと視線をずらすと、捲った袖で露わになった白い腕に無数の傷があるのが目に入った。先日の十二鬼月戦で負ったものだろう。
「身体は大丈夫か。」
「はい!何の問題もありません!あ、お腹は空いてみえますか?お食事のご用意も出来てます。」
白石は屈託無く笑う。その無邪気な姿とは裏腹に、怪我を負っている身体で屋敷の掃除や食事の支度などの労働をこなしてしまうことに一抹の心配を抱く。
「白石はここに柱の仕事を知るために来ている。それ以外のことをする必要はない。」
無理をするな、と伝えたかった。