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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第16章 読めない心




その優しさに感謝を伝えねば!と美雲は意気込む。


「じゃあ、お夕食作りますね!」


美雲がグッと力こぶを作るポーズを見せる。


「今夜は任務に発つ。白石の任務同行は明日からで良い。…柱の仕事内容を知ることが目的だ、それ以外のことはやる必要はない。」


美雲の意気込みは呆気なく崩れ去った。
間も無くして、冨岡は半分ずつで柄の違う羽織をはためかせ、夜の闇へ姿を消した。


広い屋敷で1人になる。稽古場はもちろん、この屋敷は物が少ない。こざっぱりしたその佇まいが、いまはがらんとしていて、誰も住んでいない空き家のようだった。


(…柱の仕事を学ぶって言ってもなぁ)


稽古場の真ん中で足を伸ばして座り、天井を仰ぐ。


(冨岡さんのお役に少しでも立ちたいな…)


いまは柱と隊士の関係だが、元の元を辿れば、冨岡は美雲にとって恩人だ。鬼になった母のことも途方に暮れていた私のことも救い出してくれた存在。感謝してもしきれない。


「ん〜っ!やるぞぉ〜〜!!」


美雲はまた意気込み直す。義勇の用意してくれた着物、袴を着る。袂が汚れないように襷掛けをする。


庭の井戸から水を汲み上げ、雑巾を濡らし、固く絞る。稽古場から始まり、家中の床や柱を拭きあげた。
昼間休んだせいか、眠気はなく、掃除はサクサクと進んだ。拭き掃除が終わると部屋の空気が入れ替わったような清々しい気持ちになる。


炊事場に移り、竃の具合を確認する。あまり使ってはいなさそうだったが手入れはきちんとされていた。明日から炊事が出来るように、釜や鍋を一通り洗う。


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