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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第16章 読めない心




冨岡の運んでくれた布団を敷く。1人用の布団を敷いただけで、部屋は埋まったが、身一つで移動する平隊士の美雲には手荷物などなく、広さの面での不便はなかった。


ただ一つだけ困った点があった。寝巻きがない。
隊服しか持っていない。藤の花の家紋の家などでは浴衣を貸してもらえるから盲点であった。
さすがに屋敷の中を探すのも憚られるし、冨岡に休めと言われた手前、外へ買いにいくのも如何なものかと思われる。
仕方なく脚絆を外し足袋だけ脱いで、隊服のまま布団に入った。



布団に入り、昨夜の疲れというよりは日中の産屋敷邸での怒涛の出来事での気疲れで、美雲はすぐ眠りに落ちた。



どれだけ寝たのだろうか。ゆっくりと目を開けると日はすっかり暮れかけていた。布団から起き、ぐぐっと伸びをする。眠ったおかげで身体はさらに軽くなった。


ふと風呂敷に包まれた何かが視界に入る。部屋の隅においてあるそれは寝る前には無かったものだ。
美雲は不思議に思いながら風呂敷の縛り口をスッと解いた。包まれていたのは、服だった。手に取ってみるとそれは、寝衣用の浴衣と着物、袴だった。それは明らかに綺麗で糊付けされた匂いもする新品だ。


美雲は足袋を履き直し、慌てて屋敷内を進む。探していた相手は稽古場にいた。美雲の足音に気づいていた彼が先に口を開く。


「…起きたか。」


禅を組んでいた彼がゆっくりと目を開く。


「冨岡さん。部屋にあった服…、」


「ないと困るだろう。町で適当に見繕った。気に入らなかったら処分してもらっていい。」


「ありがとうございます!大切にします!…あ、お金、払います。」


「そんな良いものではない。気にするな。」


任務に美雲が同行し、屋敷で生活を共にすることを冨岡は嫌なのではないかと思っていたが、生活できるように必要なものを揃えてくれた姿に彼の気遣いを感じた。
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