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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第16章 読めない心




(冨岡さん、ちゃんと屋敷を案内してくれてる。口数は少ないけど、気を遣ってくれてるんだな。…優しい?のかな。)


なんてぼんやりと考える。


「屋敷のものは自由に使ってもらって構わない。なにか聞いておきたいことはあるか。」


「いえ、今のところ大丈夫です。冨岡さんのお屋敷なので、なにか私が目につくようなことをしてしまったら遠慮なく言ってください。」


「…。」


冨岡は無言だった。ここについてから会話があまり続くことがない。冨岡が黙って、そのまま会話が途切れたままになる。
なかなか慣れない雰囲気に美雲は若干の居心地の悪さを感じてしまう。


「…今日は休むといい。昨夜の十二鬼月との戦いで疲れているだろう。」


「傷も深くないですし、大丈夫です!冨岡さんの仕事に同行します!」


冨岡の言葉に美雲は気丈に振る舞った。確かに傷は多いが、深いものはなく体調もいい。
しかし、そんな美雲を尻目に冨岡は一言言い放つ。


「…休め。」


またぴしゃりと会話を終了させられる。美雲はシュンとした。
冨岡は1人分の布団を美雲の部屋に運ぶ。


「…俺は少し外へ出る。」


「…はい。」


同行は許してくれない。美雲は俯きがちに返事をする。その姿を見た冨岡が小さな溜め息を吐く。


「柱の仕事で出るわけではない。ついてくる必要がないだろう。だから…今日は休め。」


慰めるような優しい口調にどきりとする。玄関へ向かっていく冨岡の背中を見つめた。
なかなかテンポが掴めない短い会話で居心地の悪くなっていた心も、冨岡の一言で和らぐ。居心地を悪くしたのも心を穏やかにさせたのも、どちらも冨岡だった。彼から目が離せなくなる。高鳴る胸がいつまでも煩かった。

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