第15章 柱合会議
「うん。それじゃあ早速だけど誰についてもらおうかな。」
「どなたにつかせて頂いても、身に余る光栄です。」
顎に手を添えて産屋敷は適任を考えているようだった。
美雲はその姿を見ながら、(これまで不死川さんに稽古してもらってきたし、不死川さんかな)と考えていた。しかし、産屋敷が挙げたのは違う名前であった。
「じゃあ義勇についてもらおうか。いいかな?」
「…え、あ、はい! 承知しました。」
思いもよらなかった人物を挙げられ、とても驚いた。
助けてもらったときの、あの涼やかな横顔が鮮明に思い出された。そして、あの波一つたたない海のような光景。冨岡だけの技。
冨岡のことを考えると美雲の胸がドキドキと騒ぎはじめる。
「…義勇の水の呼吸から、美雲の"雨の呼吸"に活かせることも多いだろう?」
御屋形様の口から"雨の呼吸"と出たことに美雲はギョッとした。高鳴っていた胸が一気に落ち着き、思わず冷や汗をかく。
「僕は美雲を雨柱として迎え入れたいと思ってる。」
そう言って笑顔を見せる御屋形様の姿に、この方にはなんでもお見通しなのだなと悟る。
「…私は。どちらの呼吸を極めていいのかまだ分かりません…。自分の考えた雨の呼吸はどうしても不完全だと思ってしまいます…。」
聞こえるか聞かないかの小さな声だった。
「それならそれでも構わない。僕は美雲が決めたことを責めたりしないよ。いつでも味方だからね。」
その穏やかな口調に思わず涙ぐむ。
肉親を失っても、こんなにも優しく支えてくれる人がここにもいた。御屋形様、鱗滝さん…私は1人ではないのだと思わせてくれる。
御屋形様が皆に慕われる理由がこの短時間で理解できた。私も御屋形様に忠義を捧げる覚悟が出来た。