第2章 消えた雨粒
これまで必死に抑えてきた感情があふれ出てきて、美雲も困惑した。自分に生まれた感情をどう扱っていいか自分でもわからず、家を飛び出した。
外は雨が降っていた。朝から降っていた雨は未の刻を過ぎた今もしとしとと降り続いていた。
美雲は身体に降りつける雨も気にせず走る。顔が濡れているのは雨のせいだけではない。
全てから逃げ出したくて、美雲は存在しない出口を探すように必死で走った。
どれだけの時間が過ぎたのだろう。家からは随分と遠くに来てしまったようだ。あの取り乱した感情が嘘のように、時間が過ぎれば気持ちは落ち着いてきていた。
(お母さんとどんな顔して会えばいいんだろう、
ちゃんと今まで通りできるかな、、、、)
母に投げかけられた言葉を思い出しては気持ちが塞ぐ。
(私なんて本当にいなかったらよかったのかな、、、)
考えても考えても出ない答え。
「へっくしッ」
美雲はクシャミをした。
降り続いている寒九の雨で体はずぶ濡れだった。
(帰るしかないな、母も一人にしたままだ、、)
美雲は来た道を戻る。家へ戻ることを引き留めるかのようにぬかるんだ土が足にまとわりついた。