第13章 募る
美雲が小さな盆を持って戻ってくる。ふわりと甘い香りがした。
お茶を丁寧に入れ直し、不死川にお茶を出す。そして、小皿に乗った小さな茶菓子も出してきた。一口大の餅にあんこがのったものが皿に載っていた。
「甘いものも欲しいかな〜と思って。蔵に小豆ともち米が大量にあったので、少し使わせてもらいました。お腹いっぱいでしたら残してもらって大丈夫です!」
お茶とともに餅を食べると、慣れ親しんだ餡子の味が口に広がった。餅はしっかりと潰され粒は残っていない。おはぎというよりは餡衣餅というのに相応しい。甘さが疲れた身体に染み渡った。
「ご馳走さん。うまかったァ。…いろいろありがとうなァ。」
「ふふふ。不死川さんじゃないみたいですね。」
美雲はくすくすと笑う。
「なんだァ。潰されてぇのかァ?俺だって礼くらい言える。」
「ふふふ。あ、お茶おかわり要りますか?」
不死川が頷くと、美雲は湯呑みにお茶を継ぎ足した。
「…慣れた手つきだなァ。」
「え? あぁ、これでも一応一人娘なのである程度のことは教わってきたんですよ。一通りは出来ます。人並みに、ですけどね。」
その後も他愛のない話をした。いつもは静かな屋敷に2人の声が優しく響く。普段の死と隣り合わせの日常とは相容れないこの温かな雰囲気に不死川は目を細めた。