第13章 募る
不死川が使った湯呑みと小皿を洗い終わると、美雲は帰り支度を始める。不死川は玄関まで見送りに出た。
「今日は鍛錬などせず、この後すぐお休みになって下さいね。」
「何度も聞いたァ。お前見送ったら寝る。」
「身体冷やさないように温かくして下さいね。」
「はいはいィ。」
「では、失礼しますね。おやすみなさい。」
ぺこりとお辞儀すると美雲は玄関を出て行った。その背中を見送る。
「もう遅いから、今日は泊まっていけ」と言えれば良かったが、継子でもなく、弟子と言った訳でもない隊士にそこまでするのは変かと考えてしまった。何も気にせず言えば良かったのに、変に気を回してしまい言えなかった。
家まで送ると言ったが、病人にそんなことはできませんと一蹴された。
「夜道であっても不死川さんの稽古を受けた鬼殺隊員ですから」と言って見せてくれた笑顔が忘れられない。
玄関から出て行く美雲の手を掴みたいと思いながら、整理のつかない考えが邪魔をする。
この想いが何なのか。
ただ後輩を思う気持ちなのか。稽古をしてきた師としての気持ちなのか。はたまた…。
自分でも分からない気持ちに蓋をして、不死川は布団に入り、眠りについた。