第13章 募る
部屋に戻ると、さっきまで寝ていた布団の横に美雲が膳を並べていく。
膳に向き合うように布団の上で胡座をかく。不死川が座ったのを確認して、美雲が土鍋の蓋を開ける。ふわりと湯気がのぼるのとともに出汁の香りが漂い、食欲が湧いてくる。
「いただきます。」
「どうぞどうぞ。お口に合えばいいんですが…。」
そう言いながら、美雲は湯呑みに温かいお茶を入れる。そして、不死川にスッと出した。慣れた手つきだな、と不死川は思った。
雑炊を口に入れる。出汁の味が口いっぱいに広がり、少し生姜の風味もして身体がだんだんと温まっていく。美味しい。
雑炊は出汁、卵、ネギだけの簡単なものだったが、吸い物や新香、小鉢までちゃんと用意されているところが、美雲らしい。
「…見られてると食べづらいですよね、私、炊事場片付けてくるので、ゆっくり召し上がって下さいね。何かあれば呼んでください。」
スッと立ち上がり、美雲は奥へと行ってしまう。少しすると、炊事場から洗い物をしている音が聞こえてくる。久しぶりに聞いた"平凡な日常"の音になんとも言えない感情になった。その雰囲気も味わうかのように、不死川は温かいご飯はいつもよりゆっくりと食べた。
食べ終わって一息つくと、丁度美雲が戻ってきて、下膳して行く。
「お茶入れ直しますね。少し待っててください。」