第13章 募る
なにか食べた方がいいだろうと思い、調理を始める。
勝手に炊事場を使うことに気は引けたが、屋敷に上がり込んだら時点で何しても変わらないだろうと開き直る。
食材を選ぶ。蔵に小豆と餅米がやたら多く置いてあるのが目についたが、とりあえず米と2-3種類野菜を選ぶ。隊服の袖を捲り、竃に火を起こした。
ゆっくりと目を開く。見慣れた天井が見える。夕焼けが部屋に差し込む。いつのまに布団に入ったんだ…どぼやぼやとした記憶を辿る。段々と頭が冴えてくる。
ハッと任務のことを思い出し、慌てて身体を起こす。起こした拍子に額からずるりと濡れた手拭いが落ちた。手拭いの傍には水の張った桶も置いてある。状況を思い出せないでいると、奥の部屋からトントントンと小気味いい音が聞こえる。
ゆっくりと身体を起こし、音が鳴る場所に向かう。炊事場だ。
そこには包丁で野菜を刻んでいる背中が見えた。結ばれた艶やかで柔らかそうな髪、華奢な身体。誰かは一目瞭然だ。
「…美雲か。」
名前を呼ぶとその姿はくるりと振り返る。
「不死川さんっ!目が覚めたんですね!無理しちゃ駄目ですよ!
勝手で申し訳ないのですが、任務はお休みさせて頂けるようにお願いしてあります。今日はゆっくりと身体休めて下さい。
お食事用意したんですが、食べられそうですか?」
「…ったく、世話焼きがァ。」
いつもの不死川の口調だが、嫌そうな響きは感じない。
「…腹減ったァ。」
「ふふふ。すぐお待ちしますね!」
膳を運ぶと不死川は縁側に座っていた。その姿を消えかけた夕焼けが照らす。
「…冷えると身体に触りますよ。」
美雲がそう声をかけると、不死川は小さく返事をして腰を上げた。