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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第11章 再会




蝶屋敷に着く。正面の戸を開ける。誰も出てこない。病室を確認すれば何か分かるかと足を進める。



「…人の屋敷に無断で上り込むなんて失礼ですよ、冨岡さん。」
後ろから穏やかな口調で声をかけられ、振り向く。笑顔を見せているが目が笑っていない。



「…。」



「何か言ったらどうですか。見たところ怪我はしていないようですけど。何の御用です?いまから診察で忙しいんですが。」



「…。」



「…うろうろされては迷惑ですので、用件は後で聞きます。こちらで待って行ってください。」
胡蝶はため息をついて奥の診察室へ消えていった。



(…忙しいのか。)



待っていろと言われたが、自分で探せばいいかと思い、また屋敷内を歩き出す。なかなかに広い屋敷だが、病室と処置室の場所は把握している。



病室には誰もおらず、道場には男隊士しかいなかった。
もしかしたら白石美雲と記載された女隊士はここに居ないのかもしれない。そもそも、先生が心配しているのがその隊士なのかも分からない。
先生に彼女の情報を少しでも、と思ったが難しそうだ。考えながら廊下を進む。人とすれ違う。ふわりと甘い匂いがした気がして、視線を向ける。



少女と目が合った。
驚いたように自分を見つめる瞳は、瑠璃色のような澄んだ色をしており、きらきらと光を宿しているようで、思わず目から離せなくなる。目元に影を落とす長い睫毛。すれ違う間の一瞬の出来事なのに時が止まったように感じる。
ふと我に返り、つい見入ってしまったことに流すかのように目線を晒す。その娘は隊服を着ており、腰に下げた日輪刀に手を添えている。



(…隊士だったか。)



まじまじと目を見てしまった気まずさから、その場から逃げるように足早に歩き去る。例の探していた隊士なのか聞くのを忘れたと思ったが、戻って訊ねるのも気が引けた。



その美しい瞳が脳裏に焼き付く。振り払おうにも鮮明に思い出してしまう。どうかしている、と彼女の顔を振り切るように何もない廊下をずんずんと進んだ。


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