第11章 再会
「冨岡さん!」
後ろから胡蝶に呼ばれているのにも気付かず、肩を掴まれて漸く足を止めた。
「勝手にうろうろしないで下さい。それで、用件はなんですか。」
「用件…。人を探している。」
「誰ですか。」
「…白石美雲という隊士だ。」
「美雲さんなら先程任務に発たれましたよ。
廊下ですれ違われたんじゃないですか。彼女が冨岡さんと同じ育手にお世話になったと言ってましたし。」
「…。」
先程すれ違った女隊士が、先生の気にしていた隊士だと確信する。
任務に発ったということは回復したのだろう。すれ違った彼女は五体満足であったし、無事と分かれば、先生も安心するだろうと胸を撫で下ろした。
「…まただんまりですか。そんなだから皆に避けられるんですよ。せめて妹弟子とは仲良く出来るといいですね。」
皮肉たっぷりな笑顔を横目で見る。反論の言葉も浮かばない。
「…用件は済みましたね。では。」
何も言い返さない冨岡を一瞥し、胡蝶は廊下を戻っていった。再び廊下は静寂に包まれる。
何はともあれ白石は無事だった。先生の心労も少しは減るだろうと、静かに自身の屋敷へと帰るのであった。脳裏に残る彼女の瞳はいつまでも買えなかった。