第10章 圧倒的な力
ゴトンと鬼の首が転がる。鬼は何が起きたのな分からないと言った様子で、口をパクパクとさせていた。言葉が出るよりも前にその姿は消えていった。
鬼を見送ることなく、不死川は生き残ったあの隊士の元へ足を向けた。
「傷が深ぇなァ、藤の花の家紋の家じゃあ対応しきれねェ。胡蝶のところで見てもらえェ。」
座り込んでいた隊士を見下ろす。肩の傷は呼吸で止血させようとしているが、傷の深さと呼吸の乱れで止血しきれていない。
青白い顔が不死川を見上げたままキョトンとしている。その顔を訝しむと、隊士は慌てたよう口を開く。
「た、助けて頂いて、ありがとうございました。…あの、胡蝶のところというのは?」
胡蝶のところに世話になったことが無いくらいペーペーなのか。女らしからぬ戦いをしていたのに。
その実力を計るかの如く、女隊士をじろりと見た。足に目が止まる。戦いで怪我をして引きずっていたのかと思っていたが、色や気配から毒が回っていると察知する。
「蝶屋敷行ったことねえのかァ。…隠待ってたら毒が回りそうだなァ。チッ、しょうがねえなァ。」