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【鬼滅の刃】 彷徨う水面

第10章 圧倒的な力





隊士の腹を担ぐように自分の肩へ持ち上げる。



(軽ッ。ちゃんと食ってんのかァ?)



隊士の顔を見ると、目を丸くして驚いているようだ。



「その足じゃ歩けねぇだろォ。」



隊士は抵抗する様子もない。正確にはその力も残っていない。返事を待つことなく走り出す。蝶屋敷までは少し距離がある。



目的地に向けてひたすら足を動かす。
風を全身で感じて心地よい。より足を速めようとした時、肩に担いだ隊士から小さな呻きが聞こえた。咄嗟に足を止める。
小さな身体を肩から下ろす。既に立つ力もない身体が崩れそうになるのを支える。
肩からの出血が増えていた。走っている勢いで腕がゆられ、止血できていた傷も開いたのだろう。



「チッ。面倒くせぇ奴だなァ。痛いなら痛いって言えェ。」



隊士を両手で抱き上げる。腕が振られて肩の傷が致命傷にならないように、しっかりと抱き寄せる。不死川は再び走り出した。



痛みが和らいだのか腕の中の隊士の呼吸が少し落ち着く。しかし、その呼吸はだんだんと弱くなっていく。腕にかかる重さが増した。
彼女が意識を失ったのだとすぐ分かった。グッタリと脱力した身体に、青白い顔、冷えた手足。




「クソがァ、しっかりしろォ!」



静かな月夜の中で毒づく。耳に聞こえるのは自分の呼吸と走り抜ける風の音だけだった。
彼女をしっかりと抱き込み、蝶屋敷へ向かってひたすら走った。




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