第8章 初任務
何とか初任務を終えた。安堵感と達成感を感じる。その一方で自分の力のなさも痛感する。
今回の任務、一歩間違えれば死んでいた。鬼が川に溶け込めるのは分かっていた筈だ。足が川に入っていることにも気付かず攻撃をしていたし、川から退くのも遅かった。訓練ではないのだから、鬼の特性や強さだけを気にしていてはいけない。周囲の状況、戦う環境まで把握しておく必要がある。
任務を終えて、反省点は多く見つかった。次からは同じ失敗はしない。
刀を振り、水を払って鞘に収める。キンッという音がして、戦いは終わったのだとようやく肩を撫で下ろした。
「さむ〜〜!!服も髪もどうしようかな」
濡れた全身は容赦なく身体の熱を奪う。川床に打ち付けた手足も痛む。
狭霧山までは距離がある。ここに来るまでは走ってこれた距離だが、行きとは違い身体は疲弊していた。頭を悩ましていると、鴉が付いて来いと言わんばかりに宙を旋回する。
鴉について行く途中で空が紫色に染まり、靄がかかり始める。夜明けだ。
朝日が差し始めるころ、少しひらけた道まで出てきた。その道の先にお屋敷が見えてくる。門扉には藤の花が描かれていた。
その扉の前までくると鴉が嘴でコツコツと扉を叩く。キィと木が軋む音がして扉が開く。中から背中を少し丸くしたせのちいさいおばあさんが顔を覗かせた。
「鬼狩り様ですね、どうぞこちらへ。」
優しい口調で屋敷の中へと案内された。