第7章 色変わりの刀
鱗滝は机に向かい、筆を執った。
かつての教え子に手紙を書く。
《略啓
富岡義勇殿
先日、かつての教え子の娘が訪ねてきて剣技を教えた。最終選別も終え、鬼殺隊に入隊した。
彼女の集中力は目を見張るものがある。瑠璃も玻璃も照らせば光る。任務での活躍が義勇の耳にも入るだろう。
その娘に関して気になることがある。鬼に目をつけられている可能性がある。私の勘に過ぎないが、それは十二鬼月ではないかと思う。
もし勘が当たっていれば、彼女一人で倒すことは難しい。私は戦いの最前線にはもう立てない。無理を承知だが、何かあった時は義勇が守ってやってほしい。教え子はみな家族だ。武運を祈る。
追伸
彼女は拾壱ノ型を知っていた。既に会ったことがあるのでは。
不一 鱗滝左近次》
書き終えるとどこからともなく鎹鴉が舞い降りる。手紙を結ぶと。鴉は再び飛び発つ。その姿は闇へと消えていった。
鴉が飛んで行った方向を見つめる。
わが子たちのことを忘れた日などない。そして、今も生きている子どもたちには1日も長く生きていてほしいと願う。闇を見つめるのは、師ではなく親の顔だった。