第8章 愛とこの熱さと温もりの意味【前編△】
「…何か用ですか?」
いつものようにそう問いかければ、兵士は口元を緩ませたまま部屋に入ってきて勝手に扉が閉められてしまう。
しかもご丁寧に施錠まで掛けて。
「いや、久しぶりに顔が見たくて。元気にしてました?」
ニッコリと微笑み言う兵士に私は目を逸らす。
「…はい。」
「そうでしたか。なら良かった。」
兵士はスっと私の腰に腕を回し、自身へと引き寄せる。
そのまま空いた手で頬をなぞり…唇へと親指を移動させ感触を確かめるように触ってくる。
「また…欲しくなって…。いいかな?」
にこやかな瞳の奥に宿る熱と欲望の渦。
優しい笑みの裏にある欲情の色に私はただ見つめて抵抗せずにいると肯定と受け取ったのか、兵士が顔を近付けてきて…
唇を重ねてきた。
「っ…」
顎を人差し指で支えながらペロリと唇を舐め上げる兵士に大人しく口を開けると舌がすぐさま入ってきて戸惑う私の舌を捕まえて絡め取られる。
背中を撫でながら逃げられないように腰に巻き付く腕にただされるがまま…私は目を閉じて彼のキスに応じる。
さっきまで首元の痛みに意識がいっていたのに…
もう彼の口付けに飲まれ始めていて…
ああ、今日も孤独感や黒い感情に溺れずに済むんだ…。
そう思ったら一気に体から力が抜けた。