第8章 愛とこの熱さと温もりの意味【前編△】
「首元を見せて貰った時、チラッと胸元が見えたんだけどそこに首元にある傷跡とは…そんなに酷くは無い軽い痣や歯型がみっちりあったんだ。」
ハンジは痛そうに顔を歪めながら側に置いてあるコーヒカップを手に取って口元へ運ぶ。
「同意…にしてはちょっと違うような感じがしたんだよね。」
「…なら好きでもねぇ男に体を渡してるってことか。」
「そうなるね。あの子…なんか危ういっていうか瞳に光がない。感情すら無いように私は見えるよ。」
確かにそれは分からなくはない。
アイツは入団当初から無表情で言葉は話すが、必要以上会話しない。
淡々と話すアイツの言葉や声色に感情が無いのは気になっていた。
訓練も咎めることすらないあまりの優秀な動きに怖い部分がある。
感情すら無い奴だからこそ、彼処まで躊躇無く動けるんだろうが…。
そう考えると男に言い寄られても何も思わずついて行くのは…
目に見えてわかる。
そして同時に平気で命まで投げ打ってしまいそうな…
そんな危うさを持つに軽く舌打ちをする。
「…少し見張っておく。何かあれば報告してくれ。」
「…いいけど…珍しいねぇ。貴方がそこまで部下に目を配るだなんて。何の心境の変化だい?」