第8章 愛とこの熱さと温もりの意味【前編△】
「おっ…と、痛いかい?」
「…いえ。そんなには。」
「そう?…とりあえず少し出血してる跡があるから治療しようか。」
そう言ってハンジさんは椅子から立ち上がり戸棚を引いて薬草を手に椅子へと再び座った。
「さぁ、首元こっちに向けてくれる?」
「はい。」
ハンジさんが治療しやすいように体を傾け首元を晒す。
そこへ薬草を軽く指で傷跡に染み込ませていく。
ピリッとした痛みに眉を寄せれば、ハンジさんは困ったような心配そうな顔を向けてくる。
「ごめんね。もう少し辛抱してくれ。」
「っ…」
コクリと頷くとハンジさんは素早く治療を進めていき…
薬草を塗り終わった後、ガーゼを貼って治療が終了した。
「うん。これで大丈夫かな。」
「…ありがとうございます。」
「構わないよ。ただ酷い傷だから治るには1週間くらいは掛かると思う。その間ガーゼを取り替えたりしたいからまた来てくれるかい?」
「…分かりました。」
無表情で返事を返すと、ハンジさんは困ったように笑い私の襟元を掴み服装の乱れを戻してくれた。
「…だけどこんな傷を付けるような男とは付き合ってはいけないよ。」
「…え?」
「普通はこんな傷を付けるようなことしないからね。君のことを大事に思っていたら尚更。」