第10章 愛とこの熱さと温もりの意味【後編△】
優しく頬を撫でられ、兵長の言葉に胸がキュウッと締まるような感覚がして…鼻の奥がツンっとしてくる。
あれ…?何だろうこれ…。
分からないまま目の前が段々涙でぼやけてくる。
支え切れなくなった雫はツーと静かに鼻筋へ流れ落ちていく。
「あ、あれ…?すみませっ、なんでっ…」
パニックになりながら目元を指先で拭っていると兵長が手を掴んできて顔から離されれば、親指で拭われる。
「…泣くな。嫌だったか?」
「っ、ちがっ、なんか…」
悲し涙とかじゃない…。
きっとこれは、兵長の言葉が嬉しかったからだ。
鼻を啜りながら首を横に振り必死に伝える。
「…っ…、う、嬉しかった…んです…グス…私っ…ここに…居たかった…から…っ」
感情を話せば話す程、止めどなく流れ落ちていく涙。
嗚咽混じりの私の言葉に兵長は少しフッと口元を緩めて涙を指先で拭う。
「そうか。なら幾らでもここに居ればいい。」
「っ…ヒック…あ、ありがと…ごさいまっ…グズ…」
お礼もままならず、涙が止まらない私。
こんなこと今まで無かった。泣くことなんてとうに忘れていたというのに…。
子供のように泣く私に兵長は優しい眼差しを向けていて、私の体を力強い手で引き寄せられ抱き締められる。
暖かくて優しく包む様な抱き方に涙が再び溢れ出す。
「…っ、ぅう…へいちょ…っグズ」
「あぁ。大丈夫だから落ち着け。」
落ち着かせるように背中を撫でながら頭部に唇を寄せて口付けをする兵長。
暖かくて優しい温もり…。
こんな温もりを知ってしまったら…
もう離れることなんて出来なくなる。
それに…この優しい温もりの先を知りたくなってしまう。
そんな事を思いながら私はギュッと兵長の服を握り締めた。