第75章 折れない心
「戻ってきてください。皆貴方を待っています……ほら、聞こえますか?」
「炭治郎!!」
ああ、本当だ。
皆が何か叫んでいる。
「貴方の名は『竈門炭治郎』。鬼ではなく、人間です」
不思議と暖かい雫が頬を伝った。
額に二本の角を生やした炭治郎の頬を白藤の両手が包む。
そうして優しい声音で白藤が歌った。
初めて聞く、数え歌だ。
『一つお山のてっぺんに、二つの星が落ちてきて、
三匹の鬼がやってきた。
酒は四升、桃は五つ。
月が雲から顔出して、照らした泉に六匹蛙。
皆口々に歌い出す。
神楽舞う贄の娘の齢は七つ。
神に召します、八つの音色。
ことほぎ交わすは、帝の御前。
十の灯篭、火は断つな。
鬼は眠りて、丑寅の、戻橋にて今帰りこん』
「………白藤さん?」
「炭治郎君。おかえりなさい」
炭治郎の鬼化が解けると同時に、珠世の惑血の効果も切れた。