第75章 折れない心
念願叶い彼女を抱くことは出来たが、悲しい顔をさせてしまったことが辛くて。
でも、彼女は俺を見てはくれなかった。
彼女にとっての一番は冨岡さんで。
冨岡さんの一番も白藤さんで。
気がつけば、俺一人だけが置いていかれているような。
「白藤さん、俺と行きましょう」
「何処へ?」
「誰にも邪魔をされない二人だけの場所に」
「炭治郎君、貴方はそれを本当に望んでいるのですか?」
「どうして、そんなことを聞くんですか?」
「今の炭治郎君は、私の目をしっかり見ていないからです」
白藤は珠世から貰った薬を迷いで動きの止まった炭治郎に飲ませた。
冨岡に渡した薬は藤の毒を染み込ませた粉末を薬包紙で包んだもの。
冨岡を危険に巻き込まないための、白藤の機転である。
「鬼は何も残せません。でも、人ならば死しても尚想いを繋ぐことが出来る。貴方たちを見てきて、私はそう思いました」