第84章 新たな拠点、新撰組
話を聞き終えた土方は、やれやれとため息をつく。
「お前って…。意外に行き当たりばったりだな。」
裏切るとは彼も思っていなかった。
精々が無断外出だろうと踏んでいて、文句の一つでも付けてやろうと思っていたのだが。
「まさかの手柄を取ってくるたあ、予測できなかったな。」
土方は困った様に顎を擦る。
だが、レンは少し首を傾げる。
まだ、伊藤と話していたのは誰かも特定出来ず、日取りも曖昧だ。
それを見た土方は少し困った様に笑む。
「そいつはお前の予想通り、新見だろう。近々フードの男と会うことは知っていたが、日取りが判然としねえ。隙がなくてな。探るに探れねえのが現状だったのさ。」
「だからって…。」
「天井裏…。」
「忍者みたいな真似を…。」
乱、堀川、大和守の呟きに、レンは片眉を上げて無言で見やる。
敢えて言おう。彼女は忍者である。
「それで…、これから何処に…?」
燭台切は胃の腑を抑えながらも問うと、レンはそれをちらっと見てから口を開いた。
「屋根伝いに町を見て回ろうかと。地理を把握するなら自分で見た方が早く覚えられますから。」
それと同時にレンには探したい所があった。
清浄な気がある所だ。
向こうの世界に帰った時は、それのお陰で命拾いしたのである。
それに、清浄な気はレン自身をより活性化してくれる様にも感じる。
まさに、彼女にとっては命の源泉となるだろう。
それを知らない刀剣達は渋い顔をした。
「何もこんな夜に行かなくてもいいんじゃない?」
「せめて昼間見て回ったら?」
大和守と加州の言葉に、レンは呆れ顔を向ける。
「昼間は屋根伝いになんて移動出来ないじゃないですか。」
「だからって、この前みたいにまた…アイツらに会ったらどうするの?」
乱はうっかり時間遡行軍の名を出しそうになって思い止まった。