第84章 新たな拠点、新撰組
そこへ、こちらに近づく足音がもう一つ。
すっと開いた障子から燭台切が入って来た。
「えっと〜…。」
そして、土方を見て困惑した様に立ち尽くす。
それを見た土方の堪忍袋が遂に切れた。
「いい加減にしろよ、てめえら…!」
短気な彼にしては持った方ではないだろうか。
だが、刀剣達にしたらここで噴火されては元の木阿弥だ。
ただでさえ、不測の事態。それが更に悪い流れに傾いてしまう。
「「ご、ごめんなさい…!」」
乱と堀川が素早く宥めに入り、
「態とじゃないっ。態とじゃないからっ。ねっ。」
「そうっ。態とじゃないっ。ただ驚いただけっ。ねっ、光忠。」
大和守と加州も必死で宥めにかかる。
それを見た燭台切は何となく流れを察した。
「そう、だね。ごめんね…。思ってもみない状況だったから、つい。」
そう言ってすまなそうに笑うと、土方は気を沈めるように大きく息を吐いた。
「ったく…。で?今状況はどうなってる?」
その言葉に刀剣達は互いを見合わせる。
「んじゃあ、質問を変える。お前ら何処を探し回って来たんだ?」
土方の問いに彼らの口が開いた。
「僕と清光は、道場の周りを回って来たんだ。」
「暗がりだから時間がかかっちゃって…。でも結局見つからなかったんだ。」
大和守と加州。
「ボクは万が一の時の為の待機だよ。」
「僕は土方さんに聞きに行きました。その他は行っていません。」
「僕は門の所を見回ってたけど居なかったよ。」
乱、堀川、燭台切が続く。