• テキストサイズ

君に届くまで

第84章 新たな拠点、新撰組




手始めに、レンは自身を見張っている者達を煙に撒き、居住区エリア外の家屋の側に身を隠した。
ここは厨が併設されているらしく、窓からはご飯の良い匂いと湯気が断続的に漏れ出ていて、それと共に人の話し声が聞こえてくる。
中をちらりと覗いてみると、女性が二、三人と男性が見えた。
会話から察するに、この屋敷の家主なのだろう。
となると、武士達はこのエリアには入ってこないのではないだろうか。
そうすると、ここはレンにとって良い隠れ蓑となるだろう。
彼女は寒さに絶えながらも、じっと身を顰める。


冬は早い。帷が降り始めていた空はあっという間に宵闇となっていく。
辺りが完全に暗闇に染まった頃、レンは頃合いと見て、音もなく屋根へと登る。
そして、ひらひらする着物の裾を紐で縛った。

「さて、地均しといくか…。」

彼女にとって、隠密行動は久方ぶりである。
いきなり本星を探しに外へ出るのは気が引けるが、内部にいる伊藤ならば探るのはそう難しくはない。
レンは、人の気配に注意しながら屋根の上をそっと歩き始めた。

/ 1263ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp