第84章 新たな拠点、新撰組
朝食が終わり、レン達はそれぞれの場所へと向かう。
今日は、加州と大和守の一番隊は稽古日で、乱の二番隊と燭台切の八番隊は見廻りだ。
レンが山崎の部屋を訪ねると、既に島田が待機していた。
彼女は軽く会釈をして中へと入る。
「よろしくお願いします。」
挨拶をすると、二人は会釈を返した。
「こちらこそ。では、昨日言った通り今日は町を歩きましょう。」
山崎の言葉を合図に、三人は連れ立って部屋を出た。
町は活気付いていて、様々な人が通り過ぎていく。店はどこも入れ替わり立ち替わり人が出入りしている様だ。
とにかく人が多い。
この中から人を探すのはレンでなくても骨の折れる作業になるだろう。
「例の男の目星は付いているのですか?」
レンがそっと問うと、二人は難しい顔をする。
「目星どころか…。」
「尻尾すら掴めていない様な有様です…。」
山崎と島田は幾分か沈んだ声で答えた。
「そうですか…。」
それを聞いてレンも難しい顔をする。
人を探す上で重要なのは、地の利と人脈。
つまりは、技術云々よりも地道に手を広げていくしかないのだ。
その点で有利な彼らが尻尾すら掴めていない。
―間に合うかどうか…。
レンはじわりと焦燥に包まれるのを感じた。