第84章 新たな拠点、新撰組
「もう食べ終わったんで残っていません。」
「…いつの間に。早すぎだろ。」
「ぼうっとしてるとまた取られますよ?」
藤堂の死角から、すすすっと伸びる箸が一膳。
「新八っつぁん、いい加減にしろよ!?」
藤堂はそう言って慌てて膳を確保した。
「ちぇ。レンも黙ってりゃいいじゃねえか。」
「さすがに取り過ぎだと思いますので。」
レンは涼しい顔で白米をゆっくりと味わう。
「…さすがと言うべきか。」
「食への執念は筋金入りだよね。」
「ほんとにね。」
そのやり取りを横目で見ていた加州、大和守、乱は、肩をすくめた。
献立は、焼き魚と沢庵などの漬物少々と大根の味噌汁だった。
レンは藤堂達のやり取りを見て、お菜に当たる焼き魚と沢庵を先に平らげたのだ。
「ははっ。でもいつも通り、レンちゃんが僕のご飯を美味しく食べてくれて嬉しいよ。」
「光忠さんのご飯は絶品ですもんね。」
燭台切と堀川は朗らかに話しながら箸を進める。
それを見ていた原田は思わず吹き出した。
「お前らおもしれえな。」
いつもの愉快な光景が、レン達が加わる事でより一層楽しかったのだ。
こうして、レン達の朝は恙無く過ぎていった。