第84章 新たな拠点、新撰組
「そうなんだ。レンは山崎さん?」
大和守が尋ねると、彼女は頷きを返す。
「はい、顔合わせもしてきました。明日から街にも行くそうです。」
「…色んな意味で気をつけてね?」
「…子供じゃありませんが?」
心配そうに言う加州に、レンが憮然と返すと、燭台切がまぁまぁ、と間に入った。
「あ、そういえば、式神でその日の報告するんだろう?昨日できなかったから今日しておいた方がいいんじゃないかい?」
「あぁ、そうですね。」
燭台切の言葉に、そうだった、と思い出して荷物から便箋と筆記用具を取り出した。
新撰組の事、時間遡行軍の事、所在地や新撰組内部の歴史的齟齬。
一通りを簡潔に纏めると、丁寧に四つ折りにした。
さて、と取り出したのは、呪符。
便箋に乗せると、それは溶ける様に無くなり、次いで便箋がふわりと舞い上がる。
そして、折り紙の様にひとりでに折りたたまれて鳥の形となった。
刀剣達は物珍しげにそれを見ている。
「わぁ、こんな術あったんだ。」
「七海さんから教わりました。本来は旅に出る刀剣に持たせる物らしいんですけど。」
レンが言うと、加州がぽんと手を打った。
「そういえば節子さんがそんな様なこと言ってたの聞いたことあったかも。」
「そうなのかい?僕は初めて聞くよ。」
燭台切は意外そうに驚く。
「当時としては物珍しい事だったからかな。旅に出たいって言い出した刀剣が出始めたって言ってたから。」
加州に乱がわくわくと身を乗り出した。
「へぇ、旅に出るってどこに行くの?」
「その子によっても違うみたいよ?元の主の所だったり、全く違う時代だったり。ただ、縁がある所には行ってたみたいだけど。」
「ボクもいつかは行ってみたいな〜。」
「いいですねぇ、僕も旅してみたいです。好きなように見て聞いて、色々な経験をしてみたいですね。」
「だよねっ。戦場も勉強になるけど、人の間に混じって生活していくってのも為になりそう。」
堀川も想いを馳せる様にしみじみと語り、乱もそれに同意する。