第8章 サイレント・ガーデン
「何してんねんお前ら」
平子隊長が半目でじとりとこちらを見ている気配を感じてそちらを向くと、すぐ後ろに居た存在が少し身体を離す。手に持っていた筆を置き、ふうと息を吐く。
「平子隊長、女の子ン部屋入るのにノックも無しやなんてデリカシー無さすぎちゃいます?」
「ガキはノーカンや」
「愛美の言う通りですよ、隊長。まず大人としてどうかと思います」
「なんやお前ら最近俺に冷たァないか!?」
文句を言いながらも私達のすぐ側に腰を下ろした隊長が私の手元を覗き込んだ。続きはまた今度にしようと藍染サンが微笑んで私の頭を優しく撫でる。またよろしゅうお願いしますと笑えば、二人だけの世界作るなやと平子隊長からチョップをくらった。容赦無い。
「ほーん。字の練習しとったんか?」
「はい。藍染サン、書道の達人やて言われてはるらしいんで、教えてもろてました」
「今のままでも字が汚い訳ではないのですが、やはり少し子供特有の拙さは字に出ていますからね。本人の希望もあり、時間がある時にこうして指導することになったんです」
藍染サンに書道を教えてもらうようになったのは最近の話だ。私はまだ子供ではあるが、第三席に就いたからには大人も子供も関係なく等しく仕事が与えられる。書類の整理についてはなんなく熟せるが、その字が問題だった。流魂街の中でもあまり治安の良くない地区出身で、真央霊術院も入学してから1年で卒業してしまったために、あまり字に自信が無かった。難しい漢字や知らない単語などは辞書を使用して解決できるが、字そのものばかりはどうしようもなく。第三席として---五番隊の面汚しにならないように、他隊にも見られる書類であれば尚のこと字は綺麗でなくてはならない。その旨を伝え頼み込むと、藍染サンは書道の個人指導を快く引き受けてくれた。
「真面目やなァ、そないなこと気にせんでもええやろ。字なんて読めればええんや、読めれば」
「隊長はもう少し丁寧に書いて下さい。そういう適当なところ、字に表れていますよ」
「字に性格出るって言いますよね」
「なあ俺ほんっまにお前らに何かしたか!?お前ら二人で寄って集って俺を虐めて楽しいか!?」